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王の剣士 七

<第三部>




 そこは胸の奥から静かに、穏やかな温もりが広がっていく、そんな空間だった。
 意識と身体を占めていた苦痛はどこか遠く、水のような淡いものを隔てたところにあって、時折何かの影が、長い夢の欠片に似て曖昧に揺らぎ、過ぎる。



 深く、深く、深く──落ちて行く。
 水のような、大気のような、柔らかなそれが身体を包み込んで、深く、

 深く──



 いつだったか、そうやって見上げた事があると、ふと思った。
 空に揺れる、輝く丸い光。
 手を伸ばしても届かない事がもどかしかった。



 今は光はここにある。
 自分を包んでいるもの、それがここにあるのなら、それならここにいたい。
 ずっと、この場所にいればいい。
 それでいい。




 ふと影が心の奥底を掠める。


 けれどそれが何なのか、掴もうとする前に、意識は柔らかな光の底に沈んで行った。









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2018.4.30
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