二十二
穏やかな金色の光が満ちた空間に、揺蕩っていた。
長い間――
思考は時折浮かび上がりかけ、何かに引かれるように再び沈み込む。
誰かが呼んでいるようにも思えたが、すぐにその声は遠退いた。
そう望んでいた。
それでいいと思っていた。
ここにいれば何も喪わない。
何も見る必要はない。
自分も、ひとも、守るべきものも、守れなかったものも――
だったら、ここにいればいい。
何もかも忘れていれば、何もこの手から零れ落ちることはない。
この場所は安らぎ、満ち足りている。
けれどどこかに光がある。
今いる場所――穏やかで、温かい、自分を包む満ち足りたはずの黄金の光の中に、それはまるで暗闇を照らし貫くように輝きを放っていた。
――どこに――
その光を知っている。
その光の名を。
どこかで、いつだったか、その光へ手を伸ばした。
掴めない光だった。
ならば初めから手を伸ばさないほうがいいのだと、誰かが呟く。
手を伸ばすから掴めない。
それなのに光はますます輝きを増して行く。
輝きが、暗闇に慣れた瞳を灼く。
そこにある、と。
身体の中で、心臓とは異なる鼓動の音が、一つ、静かに響いた。
手を伸ばす。
手を伸ばしても掴めなかった光。
だが、それは、今掴まなくては喪われる光だ。
――駄目だ――
失うのは。
もう二度と。
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